法話を聞く・読む / 今月の法話
今月の法話
思い通りにしようという思いが苦しみを生む
仏教では私たちが抱えている苦しみの大きな原因は、煩悩であるとされています。阿弥陀さまは煩悩によって自らを苦しめ、その苦しみの連鎖を繰り返し続けている私を、欲望や煩悩に振り回されることのない仏としてみせると立ち上がってくださった仏さまです。
私には3つ年下の弟がいます。弟は私より20センチ以上身長が高く184センチあり、モデルの仕事をしていたこともあります。東京に住んでいる弟は帰省するたびに私を見下ろし「お兄ちゃんなのにかわいそうに」と私のことをよくからかいます。それが悔しくてその度落ち込む私ですが、初対面の方に自分に興味を持ってもらいたいがために「ぼくの弟はモデルをしていたんですよ」と自分の都合で弟を利用してしまったこともあります。どうしても周りと比べあいながら生きているのがこの私の姿であります。いくら自分の思い通りにしようとしても思い通りにならないのがこの人生、この命です。
阿弥陀さまのお浄土の世界にふれる中に、私は線引きをされて嫌な思いをしたのにもかかわらず、自分の都合で「あれはいい。これはダメ」などさまざまな線引きをしている私自身のありさまを知らされます。そんな私であることを教えてくださるのが阿弥陀さまのはたらきです。お念仏の世界、それは認め合う世界であると聞かせていただきます。阿弥陀さまは苦しみを抱えている私を見られ「そんなあなただからこそ放っておくことはできない」と南無阿
弥陀仏というお念仏になっていつも私とご一緒してくださっています。
私たちは自分と他人とを比べて優劣を考えて生きています。自分が何をなしたか、自分が他人からどう思われるかに価値を見いだしていく生き方です。阿弥陀さまはその私を見抜いてくださり差別や区別など一切することなく私たち一人ひとりの命を認め、大切にしてくださりはたらき続けてくださっています。分け隔てなく照らしてくださっている阿弥陀さまの南無阿弥陀仏のはたらきの中で私は生きております。苦しみをご一緒してくださる阿弥陀さまのお心を大切にお聴聞させていただきましょう。南無阿弥陀仏…
宮崎県高千穂町 正念寺 吉村 礼応
今月の法話 バックナンバー(過去1年分)
下記より過去1年間の今月の法話のバックナンバーをご覧いただけます。
- 令和7年5月No.445『一番より尊いビリだってある』/大道 修 (熊本県)
- 令和7年4月No.444『吹く風を受けて散る花 ひらく花』/安徳 剛典 (大阪府)
- 令和7年3月No.443『仏さまを拝んでいますか 欲望を拝んでいませんか』/井上 浄英 (福岡県)
- 令和7年2月No.442『智慧光 光につつまれたからこそ気づけることがある』/藤 清道 (鹿児島県)
- 令和7年1月No.441『年頭の辞』/大谷 光淳 (門主)
- 令和6年12月No.440『年の暮れ 何気ない日常にこそ幸せがある』/山﨑 弘純 (鹿児島県)
- 令和6年11月No.439『驕りは人間を滅ぼし争いは世界を滅ぼす』/福山 智昭 (福岡県)
- 令和6年10月No.438『聞法は終活でなく生の糧である』/安方 哲爾 (大阪府)
- 令和6年9月No.437『叱られた恩を忘れず墓参り』/大松 龍昭 (熊本県)
- 令和6年8月No.436『見送るも見送られるも倶会一処』/藤澤 彰祐 (滋賀県)
- 令和6年7月No.435『私は比べられたくないが他人の事は比べている』/柴田 弘司 (福岡県)
- 令和6年6月No.434『晴れの日もよし雨もよし いつも仏の慈悲の中』/中山 浩司 (山口県)