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今月の法話

令和元年11月 No.379
報恩 ご無駄にしないこと

 織物に色を染めていく染織作家で人間国宝の志村ふくみさんは、染め物の染料を様々な植物の花や実、葉っぱや幹、根っこなどから作られます。桜色に染めたいときは、桜が咲く前の桜の木の皮をはいで樹液を取るのだそうです。
「桜の花へ行くいのちを私がいただいている。桜色に染まっていくの中に桜の花と同じようなものが咲かなければ、いただいたということが無駄になってしまいます」と言われます。私たちも頂戴しているものの大きさを聞かせていただき、できる限りご恩を無駄にしないような生き方をしたいものです。

 様々な方がそれぞれのご縁でお寺にお参りくださいます。お参りくださった方がお帰りになるときに「ようこそお参りくださいました。またお参りください」と声をかけます。すると若い方は「またお参りさせていただきます」と元気に言葉を返してくださいます。80代後半より上の方になりますと「いのちがあれば、またお参りさせていただきます」と丁寧に挨拶をされ、帰って行かれます。
「いのちがあれば」というたった一言の違いですが、大切なことを教えていただきます。「いのちあれば」というたった一言の中に、私たちは今いのちをいただき、人生をいただき、今日をいただき、出会いをいただき、尊い仏縁をもうすでにいただいていたことを大切によろこばせていただきましょう。11月の「報恩 ご恩を無駄にしないこと」という法語は、ご恩を無駄にしていた私のすがたを問いかけてくださり、尊い仏さまのご恩の中で仏縁をいただき、手を合わせお礼を申す人生のあることを教えてくださっているのです。

広島県福山市 光行寺 苅屋 光影

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