雅楽の説明

雅楽とは

 雅楽は、朝鮮半島や中国大陸などアジア大陸の諸国からもたらされた音楽や舞が、日本古来の歌や舞に加わり融合し、日本化した音楽芸術で、10世紀頃に大まかな形態が成立し、世界最古の大規模な合奏形態として、今日まで伝承されています。
 大規模な合奏形態というとオーケストラを想像しますが、それらとは違い雅楽には指揮者がいないため、そのテンポも一定のリズムを刻むのではなく、演奏者同士の阿吽あうんの呼吸によって奏されます。
 雅楽には主に、「管絃かんげん」「舞楽(ぶがく)」「歌謡(うたよう)」の三つの形態があります。

 「管絃」は楽器だけの演奏表現で、正式にはしょう篳篥ひちりき龍笛りゅうてきの管楽器、琵琶びわことの絃楽器、鞨鼓かっこ太鼓たいこ鉦鼓しょうこの打楽器の編成で演奏されます。

 「舞楽」は音楽とともに奏する舞で、一人で面をつけて躍動的に表現するものや、四人から六人でゆったりと優雅に舞うものなど、さまざまな表現があります。日本古来の舞に基づいた「国風舞くにぶりのまい」、中国や東南アジアなどから渡ってきたものに基づいた「左方舞さほうのまい」、朝鮮半島から渡ってきたものに基づいた「右方舞うほうのまい」に分けられ、それぞれ伴奏形態、衣装の色彩、舞振りなどにそれぞれの特徴があります。

 「歌謡」は雅楽器の伴奏をつけた声楽曲です。

雅楽と仏教の関わり

 雅楽は今日では宮内庁式部職くないちょうしきぶしょく 楽部がくぶをはじめ、さまざまな寺社仏閣などで見聞きすることができますが、仏教と雅楽にも密接な関係があります。
 歴史上、仏教も雅楽も、日本へはともに中国大陸および、朝鮮半島を経由して伝来しました。そして、日本への伝来以前にすでに音楽が仏教儀式の場に欠かせないものとして存在していました。それは、伝来してきた雅楽の楽曲名に「伽陵頻かりょうびん」(仏教でいう極楽浄土にいるという鳥の名前)や「菩薩(ぼさつ)」(仏の覚りを求める修行者)などがあることでよく理解できます。
 また、日本伝来以降でも仏教儀式に雅楽が演奏されたという記録が残されています。古くは奈良の「東大寺」で、大仏開眼供養会(開眼法要)において林邑楽(りんゆうがく)(ベトナムの僧侶が伝えたといわれる音楽)の楽曲が奏されたと記録されています。

 そして、浄土真宗が拠り所としている経典に『浄土三部経(じょうどさんぶきょう)仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)・仏説観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)・仏説阿弥陀経(あみだきょう))』がありますが、そのお経の中には「咸然として天の楽を奏し、和雅の音を暢発して・・・」、「清風、ときに発りて五つの音声を出だす。微妙にして宮・商、自然にあひ和す」 『仏説無量寿経』や、「また舎利弗、かの仏国土には、つねに天の楽をなす。・・・」『仏説阿弥陀経』とあり、アジアで成立した雅楽の原型の音楽や、東洋音楽の音階など、お経の中からもその関係性を見ることができます。

 また「栄華物語」や「源氏物語」の中には、雅楽の舞はまるで自分が仏さまの世界にいるかのように感じられ、雅楽の音色は仏さまの声そのものであるかのように聞こえるなどという表現がなされています。
 このように仏教における雅楽の演奏は、まさに仏さまの世界をこの世で再現するものであったと言えましょう。