法話を聞く・読む / 今月の法話 バックナンバー(No.428)

今月の法話  バックナンバー(No.428)

令和5年12月 No.428
今年も泣いた笑った生きてきた

 12月の言葉は「今年も泣いた笑った生きてきた」です。人それぞれいろいろな人生があります。いくら双子とはいえ同じ人生ではありません。しかし大体の人が同じ経験をすることもあります。お釈迦さまはそれを四苦八苦とおっしゃってくださいました。本日はこのお言葉の味わいについてお話しします。

 【】という言葉は現在日常的に使われます。三省堂『新明解 国語辞典』には、「人間生活において味わう、大きな苦しみ」または「つらい事が多くて非常に苦しむこと」とあります。四苦八苦とは四苦と八苦を合わせて十二苦ではなく、先に申したようにお釈迦さまが、我々が根本的に受けねばならない四苦(生苦・老苦・病苦・死苦)と別に(怨憎
五蘊盛苦)を合わせて八苦ありますと示してくださいました。そして仏教で「苦」とは思い通りにならないことです。

 まず生苦ですが、生まれる一つにしても思い通りになりません。いくら医学が発展しようとも我々の境涯(世界)は悲しいかな生まれてこれないという命もあります。思い通りになりません。次に老苦・病苦です。生まれてからの身体の変化を「成長」と言ってきましたが、同じ身体の変化を今では「老化」と言います。そしてそれはV字回復しません。病も思い通りになりません。新型コロナウイルスで良く分かりました。

 最後は死苦です。もしかするとこれが一番思い通りにならないのかもしれません。僧侶の先輩にも若くして亡くなった方、事故で亡くなった方もおられます。ではその方々がろくでもない方であったかというとそうではありません。私よりよほど立派で素敵な方々でした。お釈迦さまは、苦しみ多き人生であるが、一日一日を大切に生きなさいとおっしゃいます。われわれが仰がせていただく阿弥陀さまという仏さまは、「あなたが一番うまくいかず、大事な命終えていかねばならないという大仕事を、あなたの仕事ではなく、私の仕事にさせてくれないか。あなたがどのような人生であろうが、どのような最期であろうとも暗い海の底に沈んでいくような命ではなく、光のお浄土という世界に生まれさせ、おさとりの身である仏にさせるからまかせなさい、安心しなさい」と、この身に満ちてくださっているのがの仏さまです。カレンダーの言葉にありますように、私たちは日々泣くことも笑うこともあります。しかしどのような人生であろうと、どのように変わり果てようともいつも阿弥陀さまがご一緒です。

合掌

兵庫県神戸市 源光寺 源 裕樹

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