法話を聞く・読む / 今月の法話 バックナンバー(No.400)

今月の法話  バックナンバー(No.400)

令和3年8月 No.400
偲恩 まないまれていた

 中国新聞の記者ノートに載っていた記事です。

 いつも仕事帰りに一杯お酒を飲んで帰ってくるお父さんのことを中学生の長男が嫌っており、それをお母さんは何とかしないといけないなと思っていました。

 ある日、その長男が「父親が憎い」と作文に書いて、先生や両親を驚かせました。お母さんは学校に「しばらく私に任せてください」と伝え一日学校を休ませ、長男をピクニックに連れ出しました。海岸近くで長男は遊んでいましたが、急に一点を見つめて動かなくなりました。視線の先には海岸で土木作業に汗を流すお父さんの姿があったのです。お父さんは自身よりはるかに若い現場監督に怒鳴られながらも黙々と仕事をしていました。

 それを見ていたお母さんは思わず口にしました。「お父さんは、ああやって私たちを守り育ててくれてるんやね」。それからお父さんに対する長男の態度が180度変わったというお話です。

 これは別に親がすばらしいというお話ではありません。この男の子はなぜ態度が変わったのでしょうか。何を見たのでしょうか。何を聞いたのでしょうか。今まで男の子にとってお父さんはお酒を飲んで言いたいことを言うだけの鬱陶しい存在でした。しかし自分の知らないところで自分たちのために一生懸命働いていること、そのことによって自分は支えられていたことを初めて知ったのです。

 阿弥陀さまという仏さまは私たちが背を向けているときもずっと「あなたのことが大切だよ」と常にご一緒してくださる仏さまです。そのあたたかいお慈悲の真っ只中で今日も一日過ごさせていただきます。

愛媛県今治市 稱名寺 龍田 智

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